12/23(土) 表皮水疱症友の会DebRA Japanの全國交流会に参加してきました。
年に一度、全国から患者さんとそのご家族、医師、看護師、理学療法士、企業など表皮水疱症に関わるたくさんの方が一同に介する会です。
僕は、昨年に続いて2回目の参加です。
今年の会は本当に学ぶことが多かったのでブログにまとめます。
この1年間の変化
ちょうど1年前、僕は大阪で開催された全国交流会に参加していました。
僕がまだMAKERS UNIVERSITYに採択される前のことです。
当然、今やっているチョコレートの事業もまだこの世に存在していませんでした。
患者会の代表の宮本さん以外の患者さんに会うのは初めてのことで、僕は患者さんたちとどう接したらいいのか全くわからず一切お話することができませんでした。
表皮水疱症は、全身の皮膚がめくれあがるためパッとお会いするだけで患者さんだとわかります。
患者さんは、日々その皮膚の状態と闘っておられます。
この病気の当事者でない僕が不用意な発言はできないと思えば思うほど、何もしゃべれなくなっていました。
しかし、一緒の会場で食事を食べ、ゲームをして過ごすことで、今までは教科書やニュースの中の世界であったこの病気への解像度が格段にあがりました。
「あぁ、患者さんはこういうところで困ってるんだ。」
「ここは解決する術が今のところ存在しないんだ。」
現場を見ることで僕が解決したい課題がクリアになりました。
そして、その後実際に社会課題を解決するためのビジネスに落とし込むまでをMAKERSで学び、今のチョコレートの事業に至ります。
チョコレートのお披露目
今回の交流会では宮本さんのご厚意により、チョコレートに関して発表する機会をいただきました。
この9ヶ月間、僕が何に悩み、どういうプロダクトに落とし込み、みなさんの何を解決したいのかをお話させていただきました。
ただ、僕の中には大きな恐怖が常にあります。
「もし、このチョコレートが患者さんに受け入れられなかったらどうしよう。」
この思いは常に持っていました。
僕は表皮水疱症の当事者ではありません。
この病気の大変さ、辛さを真に理解することはできない。
寄り添うことはできても、その痛みを実体験することはできない。
この巨大すぎる壁を僕は常に感じながらこの事業を走らせてきました。
発表のあと、15名ほどの患者さんに実際に食べていただきました。
中には3歳ほどのお子さんでしょうか。お母さんに
「食べ物が食べれない時でも、チョコは好きで食べてるからおいしいね」
の問いかけに
「うん、おいしい」
と言ってくれたことが本当に嬉しかった。
チョコレートが患者さんに適応できるのか。
しっかりとデータをとった前例がないため(僕は今データどりに動いています)、医療者の中でも懐疑的な人も少なくありません。
当然、人の命が関わることなのでそうならざるを得ないのは重々承知しております。
しかし、こうやって患者さんに実際に食べていただき、生の声をいただくことはなによりの結果だと思いました。
他にも、10月に試食会を行った際に表皮水疱症を患っている息子さんとともに参加してくださったお母さんが
「息子がおいしいおいしいと喜んで食べてました!もし、販売が開始したら破産です!笑」
と冗談まじりに嬉しいお言葉をおっしゃってくださいました。
嬉しい反面、やはり「破産です」のコメントはきっちり向き合わないといけないなと思いました。
現状、製造上の理由から30gで1000円を切ることは非常に難しいです。
しかし、患者さんは日常的に食べることが求められている。
より購入しやすい価格でより身近に。
僕らはそこを目指していかなければならない。
最後に夜のクリスマス会で一緒の席になった同世代の女の子の患者さんからのコメントを紹介します。
「活動のお話聞いて、同年代でここまで私たちに寄り添って行動を起こしてくださる人がいるんだと本当に感動しました。夜も一緒にお話できて嬉しかったです!」
この言葉をいただき、僕のやっていることの価値があるのかもしれないと感じることでできました。
世の中にない新しいことをやっているとしばしば自分を信じきれなくなるタイミングがきます。
でもこうやって自分が本当に届けたい人たちと一緒の時間を過ごすことの大切さを感じました。
ひとりに愛される事業を
表皮水疱症は、患者さんが日本におよそ2,000人ほどしかいらっしゃらない疾患です。
普通に医学生をしていたら絶対に出会うことはないでしょう。
たまにTwitterのDMで医師の方から、「こんな病気があるのですね。知りませんでした。」とコメントが来るくらいです。
そういった病気を第一のユーザーの対象とした事業をするにあたって多くの不安があります。
患者会を通してユーザーヒヤリングは何度がグーグルフォームを使ってさせていただきましたが、どうしてもわからない部分がたくさんありました。
割り切って進めなければいけない部分も多かったように思います。
いくつか賞もいただきましたが、本当に届けたい患者さんには受け入れてもらえるか確信が持てないでいました。
しかし、今回初めて目の前で患者さんに食べていただき、確実に可能性を感じました。
少なくともこの会場にいる方の中のひとりには愛していただける事業になる可能性が大いにある。
1人目がいれば、必ず2人目も3人目もいるはず。
そう思える時間でした。
今日のひとこと
患者さんの笑顔とおいしいの声があるから頑張れる。
— 中村恒星 / SpinLife (@kkkkosei777) 2019年12月22日
笑顔をより多くの人たちに広げていくことと経済性を両立すること。
これが僕たちの大きなミッション。
患者さんの生の声を聞いてわかったこと、一緒に同じご飯を食べてわかったことを大事にしていこう。