薬学生から医学生、そして医師へ

薬学部から医学部に学士編入した医師によるブログ。初期研修医として日々研鑽中。実はチョコ屋さんでもあります。

MAKERS DEMODAY前夜の気持ち

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今日はMAKERSのDemodayの前夜。

ついにこの日が来た。

僕はちょうど1年前このDemodayにオーディエンスとして参加していた。

 たまたま東京にくる用事があって、たまたまFacebookにイベントページが流れてきて、たまたま時間も空いていたので参加した。

今思えば本当に幸運だったなと思う。

東京にくる用事がなかったら、Facebookを開かなかったら、東京にいたとしても予定が入っていたら、僕はこの場所にいなかった。

そして、MAKERSと出会うこともなかった。

僕は1年の時を経て、成田ゼミ代表としてピッチをする側となってDemodayを迎えようとしている。

この1年間、本当にたくさんのことがあった。

せっかくの機会なのでひとつひとつ振り返っていこうと思う。

 MAKERS4期の始まり

 

MAKERSの合宿が2月に始まり、周りには事業経験者もたくさんいた。

エンジェル、VC、ベンチマーク、KPI

それどういう意味って言葉をすらすらと口にだし、会話が成り立っていく周りのみんな。

正直、わかってもないのにうんうんって言って、あとでSNS見てるふりして、KPIってなんだよって思いながらGoogleで検索しまくってた。

ああ、おれやばいとこにきたなあって思った。

でもそれと同時に世の中にはこんなに活発にビジョンを掲げて活動している人もいるんだなって思った。

めちゃめちゃ刺激的だった。

2月は、MAKERSの合宿が1番の楽しみだった。

正直、大学の外でこんなに腹を割って話せる仲間たちに出会えるとは思っていなかった。

そして、周りの勢いに圧倒され僕も事業を考え始める。

こんなに世の中を変えたいとか、不条理を解消したいというかっこいい動機で起業をしている仲間たちに負けたくない。僕も認められたいという思いもあった。

でも、メンター陣の話を聞くたびに僕の起業への決意は一瞬で揺らぐ。

MAKERSのメンターの方々は揃ってこうおっしゃった。

「自分の一生を懸けることができる事業をやりなさい。」と。

その言葉の背景にはいろんな意図があったことと思う。

でも当時の僕は、その言葉をそのまま受け止めることしかできなかった。

「え?おれは医師としても研究者としてもやりたいことなんてたくさんある。事業だけに一生を懸けるなんて絶対に無理。やっぱおれみたいなやつは起業とかしちゃいけないのかな。」

そう思うことしかできなかった。

正直この悩みは本当にしんどかった。

プログラムが終わったあとは、みんな宿舎の部屋で夜な夜な語り合うんだけど、このツイートをした2019年2月28日だけは誰とも話がしたくないくらいの気分だった。

今でも鮮明に覚えている。

そんな時、宿舎の部屋で悩んでいる僕にLINEやメッセンジャーでたくさんの方がメッセージをくれた。 

そのメッセージは今でも定期的に読んでいる。

苦しい時に救ってくれる友達がいることが本当に嬉しかった。

そして、MAKERSの同期の仲間も 僕のこの悩みをまっすぐに受け止めてくれた。

この時にこんなに僕のちっぽけかもしれない悩みに時間をかけてくれる仲間、コミュニティ、この場は何があっても大事にしよう。そう誓った。

 

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そして、この後にゼミのメンターとなる成田さん(@shuzonarita) に出会う。

成田さんのお話は過去の経験から今に至るまでの人生のストーリーだった。

 

今はこんなにきらきらしている起業家の方でも過去にはたくさんの苦労があったんだなということを肌で感じた。

この方なら今の僕の悩みも受け止めてくれるかもしれないと思い、手をあげて質問をしてみた。

僕が起業をしようと思った理由が、見栄や承認欲求、反骨心からきており、その理由が汚く感じている自分がいること。そして、事業に一生を懸ける覚悟が今はないことを。

すると成田さんは、こうおっしゃった。

「大事なのは出発点の理由じゃない。動いている中で見えてくるものに何を感じ、何を思うか。そしてそれをどう行動に繋げるか。」

そして、今までかっこいい動機を話していたMAKERSの同期の数人も「実はおれも一緒で反骨心とかで始めたんだよね。」と本当の原点を言ってくれた。

めちゃくちゃ安心したのと同時に、人はだれでも自分のことをかっこよくみせたいし、すごいやつだと見せたいけど、その鎧を外したときに相手との心地よい関係性が醸成される感覚を感じた。

紆余曲折あったが、事業立ち上げるという覚悟を決める。2月の終わりくらいだったかな。

 

 

さて何をしよう

そして次の問題が目の前に立ちはだかる。

「さて、何の事業を立ち上げようか。」

自分はハードウェアが作れるわけでもないし、プログラミングができるわけでもない。

なんのサービスを作ろうか。

その時に成田さんが

「動いてくる中で見えてくるものに何を感じ、何を思うか。それをどう行動に繋げるか。」

そうおっしゃっていたのを思い出した。

 

実は、僕はMAKERSに入塾する前からずっと表皮水疱症と言う皮膚難病の患者会でHPの更新などの作業をして関わっていた。総会に出て、患者さんの生の声を聞いていた。

もともと皮膚科に興味があったわけではないが、たまたま知り合った北大病院の先生が皮膚科の先生でご紹介していただき患者会で活動することになったというご縁である。

MAKERSのDemodayの時といい、患者会との出会いといいご縁の力はほんとすごいなと思う。

 

患者さんの課題ってなんだろう。今まで見てきたこと感じたことの記憶をフル回転させて考えた。そして「食事だ」と思った。もはや直感に近かったくらいだった。

そして、直感を確信に変えるために本腰を入れて、ヒヤリングを開始した。

こんなものは食べやすい。こんなものは食べにくい。こんなものを食べたい。など。

ただ、ヒヤリングを続ける中でまた大きな問題に直面する。

そう、僕は食べ物を作るスキルがないということに。厳密に言えば「ない」というのはありえないのだが、当時の僕は自分にブロックをかけてしまっていた。

そんなとき、成田さんに続く救世主二人目が現れる。

同じ4期生で東大の医学部3年の川本亮。

アメリカミズアブというハエの幼虫を使った生ごみ処理の事業をやっている彼と合宿中の大浴場で2時間半くらいふたりでしゃべった。

その時に彼は僕にこう言った。

「バカになれ。アホみたいにどんなクオリティでもいいから物を作っていれば協力してくれる人は必ず現れる。」と。

夜な夜なハエの幼虫を見つめ続けているらしい彼の言葉は本当に説得力があった。

そして、札幌に帰って僕はスーパーに直行した。

 

患者さんのヒヤリングのデータをもとに僕でも作れそうで、かつ患者さんにとって最適なものはなんだろうと考え抜いた。

下は、実験初期の画像です。そうとう迷走しているのがわかる笑

 

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コロッケ、フライドチキン、コーンポタージュ、カレーなんでも試した

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患者さんでもたべやすいようにミキサーにかけてみる

まあ、うまくいかないわけです笑

あああああああってなってる時に、ふと食べたチョコレートで僕は閃いた。

「これだ!」と。

そんでソッコー製菓用の原料を売ってるお店に行って、なんでもかんでも買ってチョコレートにまぜまぜし始めるわけで笑

 

お金のことなんてなんも考えずに病的なまでの判断の速さでいろんな素材を買ってまぜまぜした。

僕の一人暮らしの家のシンクは、チョコレートの洗い物でいっぱいの日々が続く。

そして、自分で作れるクオリティのプロトタイプの限界を迎え、札幌市のチョコレート専門店であるSATURDAYS CHOCOLATEさん(https://www.saturdayschocolate.com/)に駆け込んだ。

ねこの肉球の型で作った試作を握りしめ、お店に向かい一緒に作って欲しいと伝えました。

結果は快諾。社長の懐の深さには今も頭があがりません。

本当に感謝しています。

そして、川本が僕に言った「夜な夜なアホみたいに物を作っていれば、協力してくれる人が必ず現れる。」という言葉はほんとなんだなと感動した。

これが今も製造を担ってくださってるSATURDAYS CHOCOLATEさんとの出会いです。

 

しかし、僕ひとりだけではいろいろと限界を迎えていた。

食品や栄養に関する専門知識もそこまで深くはないし、何よりこなさなければならないタスクが多すぎてパンクしそう。

そんな時に、僕は今もメンバーとして一緒に活動してくれている齊藤に声をかけることに。

もともと面識はなかったのですが、彼女は食、札幌というキーワードでかなり目立っている存在だったので僕が一方的に知っていた。

札幌駅のスタバで試作品とコンセプト、事業への想いを伝えると事業をサポートしてくれることに。

最初はサポートだったんですけど、あれよあれよという間に今では収支計算とかブランディングとかがっつりジョインしてもらっている。

いつのまにかチームになっていた。

 

チームができる

そうなるとまた新しい課題が僕に生まれる。

「組織論」

組織のリーダーとしてメンバーのモチベーションをどう維持していくのか。どうやってメンバーを引っ張っていくのか。

大学の部活とかそういうレベルの組織ではなく、ビジネスとしての組織を引っ張っていくことは難しく、大きな戸惑いを生むことに。

そんなタイミングでたまたまリバネスの丸さん(@yukihiroMaru) が札幌に来られるということで一緒にジンギスカンを食べることになり、そこで大きなヒントをもらう。

僕はそこで、

「丸さんがリバネスという大きな組織のリーダーとしてこれだけは徹底してやっているということは何ですか?」

と聞いた。

我ながらなかなか良い質問をしたなと思う。

質問した瞬間、それまではにこにこしていた丸さんの顔が一瞬ひきしまったのを今でも強く覚えている。

そして丸さんはこうおっしゃった。

「感謝とテンション」

新入社員であってもなにか会社のためにしてれたらまずは「ありがとう」

社員がプロジェクトがうまくいかなくて悩んでいたら何にも根拠がなくてもまずは大丈夫、できるよ。」

これだけは徹底しているらしい。

これが今の僕の組織論の基盤になっていることはいうまでもない。

 

社会課題との両立

そして最後に。

僕が事業をする中で大事にしているのは、ビジネスと社会課題解決の両立である。

特に医療領域では顕著かもしれない。

これは、ゼネラルパートナーズの進藤さん(@hitoshi_shindo) にエッセンスを教えていただいた。

僕のチョコレートが対象にしているのは、表皮水疱症という日本国内に2,000人ほどしかない病気の患者さんである。

市場は一見かなり狭い。

なんで株式会社なの?って結構言われていた。

でも、障碍者雇用という領域で世の中で初めて株式会社で事業を展開している進藤さんのアドバイスにより、僕の事業もビジネスとして回していくためのポイントと価値を掴み始めたかもしれない。

市場は小さい領域。

でも僕がその領域でしっかりお金が回ることを示せば、他にもその領域に参入するプレーヤーが出てくる。

そうなれば結果として患者さんが恩恵を受ける。

なるほどビジネスとしてお金を回すことも大きな価値があるなと感じた。

もちろん、進藤さんが長年培ってきた経験を理解するにはまだまだ到底及ばないが、何もない僕に親身にお話に乗ってくださることは本当にありがたいですし、感謝しています。

 

 

僕にとってこのMAKERSの4期生に採択していただいたことは、確実に人生におけるターニングポイントだった。

医学部のカリキュラム上、5期の応募はしないつもりだったので最初で最後のチャンスに僕を選んでいただいたETIC.の皆様には本当に感謝している。

そして、まだまだ起業家としては芽も出ていないし、まだ医師でもないし、まだ一流の研究者でもない僕だけど、僕が何者かになった時に次の世代に絶対還元していこうと思っている。

また、一生大事にしようと思える仲間に出会えたこと。

何よりもこれが僕の人生にとって大きな財産になった。

そんなMAKERSでの1年間の集大成。

明日、2019年11月10日、僕の1年間のストーリーと今後の展望をゼミ代表としてピッチします。

この場を僕に提供してくださった全ての方に心から感謝します。

 まだ観覧申し込み間に合うのでもしお時間ある方は下記リンクよりせひ申し込んでください!

https://makers-u.jp/demoday2019

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